猛暑の夏、台風の九月、北海道の地震。
自然に翻弄されながらも、日々の営みを取り戻そうともがく毎日。
皆さまの暮らしがどうか平穏でありますように。
京都、東山に新築されるゲストハウスにお納めする家具を作らせていただきました。
建物の1,2階を宿泊用に、
3階屋上をお茶席などに使用する空間に使用されるとの事で、
その両方の用途に沿ったアイテムをクリ材で製作しました。
まず、屋上用のベンチとテーブルです。
脚に近郊で入手した栗の生木を使用。
ドローナイフで八角を荒々しく削り出し、
貫に黒皮丸棒をあしらい、まとめ上げました。
脚の太さ、転びの角度、座面の面取りによる見え方の違いなど、
かわいくなりすぎず、デザイン的になりすぎない仕上がりになるよう、
試行錯誤を重ねました。
栗は程よい柔らかさで、グリーンウッドワークの工法に向く材だと思います。
田舎では稲を収穫した後に干す「稲木」に使用されたり、
水に強いのでもちろん建築にも使われたりと、
昔から生活と深く結び付いた材でもあり、
クリ材を見つめることは、生活道具の成り立ちに思いを馳せることに繋がり、
とても面白い作業です。
自分の手でも、今後永く使われる生活道具が一つでも多く作れたら、
と思います。
ベンチと合わせて使用するテーブルは高さ2段階可変式の2wayテーブル。
脚の構造をギリギリまで減らし、目を引く形状に。
天板は外丸カンナを自作し、
触れると分かる程度のテクスチャーを付けました。
使用感が出れば更に風合いが増すはず。
幸か不幸か、
災害に見舞われながら仕事をしたことは、
普段、流れで終えてしまう可能性のある仕事にも、
ありがたみを感じながら深く向き合うことにもなったようで、
自分の中に新しい機軸を見いだせた思いです。